2015年8月5日水曜日

活版印刷

現在主流となっている印刷技術はオフセット印刷と言われ(他にも様々な印刷方法はあります)、満寿屋の商品もこのオフセット印刷で印刷しているものがほとんどです。

色合わせ等、印刷工程にはもちろん職人の技術が必要ですが、比較的手間がかからず一度に大量の印刷が可能な点も普及している要因です。

では、オフセット印刷が広まる以前はどのような印刷技術が主流だったでしょうか。数はだいぶ少なくなりましたが、現在も残る「活版印刷(読み:かっぱんいんさつ)」がそうです。

活版印刷とは凸版印刷(読み:とっぱんいんさつ)の一種で、極端に言えばハンコと同じ原理です。
下の写真のような物理的に凸凹のある金属(鉛)の版(木製の版もあります)は「活字(読み:かつじ)」と呼ばれ、これらを組み合わせ、形を整えて印刷の版にします。このことを、版を組むため「組版(読み:くみはん)」と言います。

活字は1字ずつ独立しています

組んだ版を印刷機にセットした様子

組んだ版を印刷機に固定し、インキローラーでインキを付け、紙に押し当てて印刷します。金属の版にプレスされることになるため、特に厚い紙の場合には紙に凹みが出ることがあります。

印刷の見た目だけでなく、物理的な凹み等によって風合いも感じられることから、近年デザイン業界を中心に再び活版印刷への注目が高まっています。

万年筆についても同じことが言えますが、当時の全盛を知らない若者世代にとっては、以前の技術や道具が新鮮に映り、新たなインスピレーションを呼び起こすことにつながるのでしょう。

昔ながらの技術を使って、新しい発想で、新たなものが生まれるというのは素晴らしいことですね。これからも活版印刷の特徴を活かしたものがどんどん出てきて欲しいと願っています。

2013年、台東区三筋の活版印刷所、笠井印刷さんが廃業されました。直接のお取引はありませんでしたが、ある方のご紹介でご縁を頂き、小型で手動の活版印刷機を譲り受けました。

左のレバーを下げることで紙に版が
押し付けられ、印刷されます

これは一般に「手キン」(もしくは「手フート」)と呼ばれ、A5サイズくらいまでの紙に印刷が出来ます。数十年間大事に使ってこられたそうで、今でも全く問題なく使用可能です。

今の私では商品の印刷に使うのはなかなか難しいため、自分の名刺等の印刷に使っています。出来ることなら今後は他にも、この手キンを使って面白いものが出来たらと考えているところです。

先ほど活字について書きましたが、活字で文字を組んで印刷するためには膨大な数の活字が必要となります。

棚にびっしりと並べられた大量の活字

よく使われるものは取りやすい
場所に保管されていました

上の2枚は笠井印刷さんの写真ですが、棚にびっしりと詰め込まれているのは全て活字で、この棚が印刷所内にいくつもあるのです。

英語であればアルファベットや数字、記号等だけのためそれ程ではありませんが、日本語の場合はひらがな、カタカナ、漢字等必要な活字を揃えるのは容易なことではありません。

一つの組版でいくつも同じ文字が必要になることもあれば、文字の大きさの違うものを使う場合もあります。

図や絵は活字で表現出来ませんので専用の版を作ることになりますが、印刷の職人ではない上に活字も揃っていない私は、文字組みもこの専用版に含めて作ってしまいます。

亜鉛で作った私の名刺の専用版です
本当は余白部分はもう少しカットした
方が汚れが付かずに良いのですが

組んだ版をこのように手キンにセットします
上部に見えるインキディスクにインキを乗せ、
レバーを引くとローラーが下りて版にインキが
塗られます

そうすれば活字を組む必要もなく、手キンに版を固定しさえすれば、インキを付けて紙に印刷が出来てしまうのです。自分の名刺はこのやり方で刷っております。



いろいろな箇所の微調整等試行錯誤しながらですが、自分で印刷をするのは楽しいですね。(今のところ趣味程度の活用なのでそう感じるのかも知れません。職人さんは本当に大変だと思います。)

インキディスクの回る音を聞いていると、様々なアイデアが生まれてきそうです。

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